|
大丈夫、心配しないで…僕は必ず勝ちますから 君は僕たちの支え、決して失うわけにはいきません 可愛らしいお嬢さんに、真面目そうな少年── 君たちと初めて会った時の…僕の第一印象です 急に異世界から来ただの、800年前に似ていると言うから、 ちょっと驚きはしましたけどね 玉を宿し八葉は神子に仕えるもの──それが伝承 そして怨霊は、白龍の神子にしか封印できないのだと 平家が怨霊を生み出し続ける以上、 源氏には神子の力が不可欠でした 九郎も始めこそ突っかかっていたけれど、 今ではだいぶ、君を認めているんじゃないかな まさか僕が八葉に選ばれるだなんて思わなかったけれど… 戦奉行に軍師──君たちが育ったという、 豊かで平和な国では聞きなれない言葉だったでしょうね それこそ、おとぎ話だと思ったかもしれない けれど、ここでは現実の…日常の延長です 現に平家との争いは日に日に激しさを増していて、 近く本格的な合戦が始まるのは間違いない 還内府──黄泉から還ったという、平家を率いる武将 彼がこの合戦の鍵を握っている そして八葉が──すべてが終わりに向けて動き出す おそらく平家は一門の総力を挙げて勝ちに来るでしょう 対する源氏は、薬師から源氏の軍師へ── 僕は、僕の望みのために戦に身を投じました 僕は自分の目的を譲れない たとえ、どんな結末が待っているとしても── 独りでも歩くと決めた道です 行きの道さえあれば、それだけで構わない 君の澄んだ瞳にこの世界は──僕は、どんな風に映っているのかな その瞳で見つめられて、君に魅惑された人は動けなくなるでしょうね そう、離れがたくなった…僕のように |
|
こんばんは こんな時間に、それも一人でどうしましたか? …すみません、急に声をかけて驚かせてしまいましたね いえ、用という用があったわけじゃないんです 渡殿から君の姿が見えたものですから…つい それに夜ももう遅いですしね いいえ、頼まれもしないのに僕が勝手に心配したんです だからそんな風に謝らないで それに…君の横顔がとても綺麗で見とれていたわけですから 本当ですよ あぁ、ほら…君が笑うと夜だというのに庭が明るくなりましたね そう、君には笑顔が似合いますよ 僕も一緒に見てもいいですか? なるほど、月を…池に映った月を見ていたんですね 今夜は満月でしたか え?僕は月を嫌ってなどいませんよ …っ、いやだな、そんな風に見えてしまいましたか? ただ…多分── 君は…君ならどう思いますか? あの空に浮かぶ月と、こうして池に映った月、 どちらがより美しいと感じますか? ──僕の答えですか? そうですね…ふふ、いずれも…というのは我侭過ぎるかな 水に映る月も、空に浮かぶ月も光放ち輝いて けれど、どちらも手の届かない──留めることのできないものです それでも、君の隣で見ることができるのならばいとおしい これで君の視線を独占してさえいなければ…なおさら なにしろ君が、後ろから近付く足音にも気付かないほどの執心ぶりです もしかして君は、このまま月に戻るつもりなんですか? 竹取物語の、やがて──月へと帰ってしまう姫君のように どこか君に似ている気がしませんか? 自分では思い当たりませんか? ふふ、そんな首を傾げなくても… 君は可愛い人ですね そして──とてもいけない人だ |